黒猫サンタのプレゼント

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 勇次郎は悠馬に、「今日は日本の王様の誕生日なんだよ」と話した。けれど悠馬にとって大切なことは、クリスマス・イブまであと一日ということだった。だけど、この日はできるだけ普通に過ごさなければだめよ、と佳菜子は言った。特別なのは明日。今日は四月二十三日と一緒だし、八月二十三日とも一緒。ただの二十三日で普通の日。だから豪華な料理も食べられないし、雪が降り積もったみたいなクリームのケーキも出てこない。それでも、この日の夕食はカレーライスだった。  そして、十二月二十四日がやってきた。クリスマス・イブだ。  悠馬は朝からそわそわしていた。早く夜が来ないかな、と心待ちにしていた。午前中はお絵かきをして遊んでいたが、友達から電話がかかってきたので、午後からは一緒に遊んだ。五時を回る前には家についた。すると、クリスマスツリーやカーテンの上などに装飾されたイルミネーションがちかちか点灯していて、テレビにはクリスマスのヨーロッパの風景が音楽とともに映し出されたDVDが流されていた。それは勇次郎が、クリスマスの雰囲気が出るように、と買ってきたものだった。 「どう、悠馬、クリスマスっぽくていいでしょ?」と勇次郎が言った。 「うん」と悠馬は適当に相づちを打った。「ねー、パパー、それよりオセロやろー」  悠馬はオセロのボードを持ってきてぴょんぴょんと飛び跳ねた。勇次郎は苦笑し、夕食まで悠馬に付き合った。  佳菜子に言われて、悠馬と勇次郎は二人でお風呂に入った。七時ごろにはDVDを止めた。テレビのチャンネルがバラエティ番組に切り替わり、テーブルにはチキンやサラダ、チーズにサンドイッチ、洒落たシャンパングラスがイルミネーションの光を反射させてきらりと光った。     
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