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ーーー静寂な部屋の中。
電話の向こうで電子音が鳴り続けていた。
〝プルルル... プルルル... プルルル... プツッ 〟
『あぁ……、何処にいるんだ…
なんで出ないんだよ… 頼むから…… 』
ダイニングテーブルに
肘を付くと手を組んで額に付け目を瞑る。
〝ふぅ~っ〟小さく息を吐いて
ゆっくりと窓の外を見てみると
雪が降っていて… しかも荒れてきていた。
今夜はクリスマス・イブだっていうのに...
この寒空の下どこに居るんだ?
せめて暖かい建物の中に居てくれ…。
『俺に電話をよこすなんて
余程のことがあったのだろう…。
はぁ~、なんで気付かなかったんだっ。』
自分のタイミングの悪さにイラつく。
しかも...、留守電に入っていたあれは...
あの声は... 明らかに泣いているようだった。
本当に微かに聞こえる泣き声
耳を澄まさなければ聞こえないくらいの…
この前会った時は
幸せいっぱいの弾けるような笑顔だった…。
やっと…
やっと幸せになれるんだなと
思ったばかりなのに一体なにがあったんだ...?
何かがあった事は間違いないはず
そして俺に助けを求めた…
俺に電話をしてきたってことは
こっちにいるのか?
着信の時間から既に3時間も経ってる。
気付いたのは1時間前
ずっと掛け続けているのに繋がらないコール。
『頼む…、頼むから…… 出てくれっ… 』
もし、うちに来たらと思って待ってみたけど
もう居ても立ってもいられず、車のカギを掴んで玄関に向かおうとした。......その時だった。
携帯が鳴り響いた...!!
『里桜っ!!』
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