本通

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本通

世の中はメールといった機能を代表に電子機器での文字でのやり取りが主流となっているが、そのなかで「文通はどうだ!」と叫ぶ男性がいた。 彼はある喫茶店の椅子に座り目の前には一杯の湯気の立つカフェオレが置いてあった。 手には一冊の文庫本が開かれた状態で握られてある。 しかし店内でそこそこの音量で喋ってしまえば迷惑になるのを分かっているのだろうか。 分かってないからそこそこ大きな声で叫んだのだろう。 そんな彼に対して言葉を聞いていた対面に座る別の男性は「そりゃポイント高いわ。ずっきゅんでしょ」と返す。 彼の目の前には一杯のブラックコーヒーが置いてある。ホットコーヒーを注文したのに猫舌でそのくせ彼は実はアイスもそんなに好きじゃないといった面倒な男であった。 そんな彼らはアホらしさ満点の会話を行っていた。 彼らはある大学の1年生だ。 何か特別秀でてるわけではない。ただただ一般の大学に入学し本好きが幸いして友人を見つけたちょっとした変わり者達なだけである。 さて、カフェオレを頼んだ男性は読んでいたページにスピンを挟め本を閉じる。 「メールとかラインとかが主流だろうけども、俺は聞きたい!なぜ書いた文字のやりとりをしないのか!と」 一言発してからカフェオレを飲む。 それを聞いていたブラック派の男性は言葉を返す。 「そりゃお前、便利か否かじゃないか?やっぱ文明機器を使わないと今の時代人に後れをとるぞ」 彼は彼でカップを触り自分の適正温度を測りながらコーヒーを飲むその時を待っていた。 「違う、それは違う。異議ありだ!」 「うるせぇぞ」 カフェオレ派の男性は音量は少し下げながらも、熱量は押さえずに語った。 「確かに文明機器を使う事には文句はない。しかし、文通のような文字のやりとりを古いとするのはどうかと言いたいのだ。例えばハガキだって文字を書いて送るだろう。ポストだって今も置いてある。だと言うのに文通は古いってどういうこっちゃ!」 ブラック派の男性は黙って話を聞いていたが、彼なりにこの話の終わりを見つけたのだろう。 こんな言葉を口にした。 「相手がいなくて寂しいからって文通を持ってきて八つ当たりするな非モテ」 「違う!そう言う事をいいたいんじゃない!最近のメッセージ事情について俺は!」 彼らのアホらしい談義はその一杯のカフェオレとブラックコーヒーがなくなっても続いたそうな。
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