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「澄男様!!」
耳の鼓膜を貫く声音。凛とした、しかし明確な存在を思わせる呼び声で、荒野に倒れる一人の少年の意識が舞い戻る。
砂を引きずるような音とともに先に立ち上がったのは、銀髪の少年、裏鏡水月であった。
生きている。ということは、相殺されたのか。
超能力は同等の強制力が真正面からぶつかり合うと、どちらも機能を消失する特性を持つ。やはり、他人の超能力を即興で使いこなすのは難しいか。
修行が足らない。この程度では。もはや、やむおえぬ―――。
「か……ひゅー……れい、か……?」
ひゅー、ひゅー、と事切れたような呼吸をする何か。
焦点は既に合っておらず、朦朧とした意識で、地に伏している澄男だ。
体力を使い果たしたのか、気力を使い果たしたのか。個人を判別する事もままならない。
「澄男様……大丈夫ですか!? 御玲、介抱を頼みます」
「は、はい」
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