初めての黒星

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 弥平(みつひら)は首を傾げる。  聞いたことのない名だ。一体、誰だ。それに、ある集団とは何だ。  分からない。分からない事を分かろうとしているのに、分からないことが増えていく一方。  御玲(みれい)の方へ視線を送る。彼女は首を左右に振った。  御玲(みれい)も知らないか。これはまだまだ質問しなければなら―――。 「またの名を、流川(るせん)佳霖(かりん)」  今、何と言った。  大気の流れ、風の音、そして時間。全ての物体が一瞬、停止したような感覚に襲われた。  聞き間違いだろうか。流川(るせん)佳霖(かりん)。彼はそう言ったか。  その者が誰か、この場で知らない者はいない。その者は、むしろよく知られている人物だからだ。  流川(るせん)白鳥(しらとり)水守(すもり)。この三家の中では、名の知れた存在。  何故なら、流川(るせん)佳霖(かりん)と呼ばれる、その人物は―――。  ―――流川(るせん)澄男(すみお)の実父にして、流川(るせん)本家派の幹部の一人なのだから。 「佳霖(かりん)様が……?」
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