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空に焼きつく紅霞。
時は既に夕刻にさしかかり、太陽は地平線へ没するルーチンワークを、性懲りもなくこなしている。
更地になった上威区を、遠くから双眼鏡で眺める青年。白い学生服のような、軍服のような服装で身を包み、夕焼けをバックに茶髪を靡かせる。
青年は目から双眼鏡を外した。ニタァ、と不気味な笑みを浮かべ、霊子通信を何者かに送る。
『佳霖様。流川澄男が、完全に超能力を使いこなし始めたようです。どうなさいますか』
『ようやく、時は満ちたな。このときをどれだけ待ちわびたか。監視、ごくろうだったぞ。十寺』
いえいえ、と白い学生服のような上着を身に纏う青年―――十寺興輝は霊子通信越しで会釈する。
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