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件の三月十六日から今日、五月五日まで、流川澄男とその一行の監視を行っていた。
三月十六日以降、当然の事ながら流川家の眼が極めて厳しくなった。
甲型霊学迷彩を常に着用し、その上から変装をしておくくらいの二重対策で、澄男達の同行を監視する毎日は、かなりの心労を伴ったものだ。
件の日から約一ヶ月弱。ようやくこの心労深い任務からも解放される。澄男が超能力を使いこなし始めた今、遂に動き出せるのだから。
『では、行かれるのですね。ヴァルヴァリオンに』
『新設大教会は、もはや用済みだ。後々邪魔にしかならん教団など、生かす意味も価値も無い』
『しかし、来るんでしょうかね。澄男ちゃん。チビって来なかったりして』
『来る。奴等とて無能ではない。なんらかの手段で竜人国の情報を精査しているはずだ。新設大教会の奴等の話によれば、``羅刹凍皇``が人里に降りたらしいから尚更、流川は北方を怪しんでいるはずだ』
『エヴェラスタを牛耳ってる魔人、でしたっけ。この間、澄男ちゃん元気にタイマン張ってましたけど』
『我が息子のパワー馬鹿は母親譲りだからな。だがお前は、北方の地を統べる魔人どもに深入りするなよ。奴等を敵に回せば、人類文明など跡形も残らん』
霊子通信越しに、降参、と両手を挙げる素振りをする。
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