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違和感のある気配はない。撒いたか。流石にかなりの距離がひらいている。
撹乱の為の手段も、可能な限り施した。それでも追ってこられたなら、猛者程度の次元ではなくなってくるが―――。
「無駄だ」
全ての思索を停止させる敵意が、首筋を掠めた。
冷たく、どこまでも平坦な声音。透き通った音色が鼓膜を滑らかに揺らすが、音源から放たれる存在感は、声に反して強大であった。
ただ音量が大きいのではない。明確な戦意が盛り込まれている。
冷気に満ちて淡白だが、一言で述べるなら絶大な無個性。
声質から感情が読み取れない、思考が先読みできない恐怖が、濃密な存在感と敵意を駆り立てる。
「俺の``カガミ``からは、逃れられない」
淡白だと思わせつつ、無個性の恐怖が声音にコクを引き立て、首筋に宿る冷覚が色濃く神経を辿る。
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