#001 ぼくの好きな人 Side望月

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#001 ぼくの好きな人 Side望月

 僕には、行きつけの小洒落た小料理屋がある。  その店を見つけたのがおよそ一年前。店主は僕より三つ上の優しい人。そんな彼、新倉君との関係は、ちょっと複雑だ。  今は小料理屋で店長をやっているけれど、前職は敏腕営業だった。誠実かつ正直な態度で人に当たれる彼は、取引相手である僕に、損をさせないよう色々と手を尽くしてくれた。自社のサービスじゃないほうがいいと判断したケースは他社との間を取り持ってくれたこともあるし、会社としてではなく、一人の人間として僕に接してくれた。  彼との取引はかなり大口だったから、僕の成績にもかなり良い影響をもたらしてくれたのだけれど――それ以上に、看過できない影響があった。  それは……僕が彼に恋をしてしまったということ。
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