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「はぁ…疲れた」
壁に掛けた時計に目を向けてみれば、ちょうど21時を回ったところ。
夕方、仕事から帰宅後に荷物の整理を始めて約3時間。
残すは目の前の押入れの中にある荷物だけになった。
辺り一面をグルリと見回してみると、山積みに置かれたダンボールだらけ。
悔しいけど、それがこの家で過ごした時間の長さを証明している。
このアパートに越してきて5年。
それは同時に彼氏である圭介との同棲生活も5年が経過した、ということを意味していた。
同棲歴は5年。交際期間はもう10年になる。
最初こそワクワクしていた同棲だけど、現実は想像していたほど甘いものではなく、ワクワクはすぐに憂鬱に変わった。
圭介は無名のシンガーソングライターだ。
収入は少なく、音楽活動以外の時間はアルバイト三昧の毎日を過ごしている。
同じ家に住んでいながらすれ違いの生活。
ほとんど顔を合わせることもない。
何年も夢を追い続けている圭介は、私より2歳年上。気付けばもう三十路をとうに過ぎていた。
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