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一つ息をつき、押入れを閉めようと手を掛ける。 と、見覚えのある入れ物が目に入った。 あれは…同棲を始めてすぐの頃、圭介と北海道に行った時に買った恋人シリーズの入れ物だ。 引き寄せられるように手を伸ばす。 不思議だった。埃まみれの場所で、缶タイプのこの入れ物だけは綺麗な状態を保っていた。 白と水色を基調として、真ん中のハート型が目を引く可愛いデザインは幸せだった日々を思い起こさせるよう。 これを買った時はこんな日が来るなんて夢にも思わなかった。 思えば、圭介はいつも突然行動に移す人だった。 私に告白してきたのも突然。 当時、圭介がいつも出入りしているスタジオの近くにある小さな花屋さんでアルバイトをしていた私に一目惚れしたのだと、のちに熱く語っていたっけ。 同棲しようと言い出したのも突然。 会える時間が少ないから、せめて寝るときだけでも一緒にいたい、という思いだったらしい。 北海道に行こうと言い出したのも突然。 雪をイメージした歌詞を書きたいからと、ノートとシャーペン片手に北海道の街で白い吐息まじりにメロディーを口ずさみ、目を閉じて佇む姿が印象的だった。 カップルっぽいことは何一つせず、ひたすらノートにシャーペンを走らせていた圭介に苦笑を浮かべたのも今ではいい思い出。 ほら…思い出すこと全部、唐突で突然で。 だから私が突然出て行っても驚かないよね。 なんて、訳のわからない理屈を並べてみる。
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