第1章 不条理な判決

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まだ刑事になって2年目だが、「これでいいのか?」 「これが自分が憧れていた正義の味方なのか?」 日に日に失望していた。 上司の松木は「仕方ないんだ、俺たちが出来るのはここまでた」 いつも肩をぽんぽんと叩いた。 今回もそうだ。 何の罪もない1人の女性が、レイプされ自殺。 親族の気持ちを考えるといたたまれなくなる。 西条には他にも余罪があるはずだった。 2年前も婦女暴行で取り調べを受けていた。 証拠不十分で釈放。 今回の取り調べは松木と自分が行ったが一貫して知らぬ存ぜぬの繰り返しで 「自殺まで俺のせいにされたらたまったもんじゃないね」と太々しく言い放った。 仲間とつるんでは数々の悪行を行うが、被害者の多くが報復を恐れて泣き寝入り。 この地域では知らない者は居ない程の、不良グループのリーダーだ。 25歳にもなって定職にもつかず、親の金で豪遊し、やりたい放題に悪行を行なう。 親が政治家で権力者。 すぐ圧力がかかり取り調べ終了。 その繰り返しだ。 今回は自殺した女性の妹が勇気を出して証言し、起訴まで漕ぎ着けた。 しかし、結果はこのざまだ。 検察にも圧力がかかっていたのは明白だった。 なんの証拠も提出しなかった。 「姉の無念を晴らして下さい」 そう言って証言してくれた妹に会わせる顔が無い。 「これが、日本警察の現実なんだ」 松木の言葉を思い出した。
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