16人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ
私は1ヶ月近く悩んだ。
夏休み中悩んだ末、二学期のオリエンテーションで学校へ行った帰りに先輩の行きつけの喫茶店に行けば会えるかも…と一大決心をし学校帰りの午後3時頃、その喫茶店のドアを開ける。
ーーカラン…
入り口からすぐのカウンター席に先輩は座っていた。昔よく見たカーキ色のジャケットの袖をいつものように肘の近くまでまくっていた。私は勇気を振り絞って話しかけた。
「あ…ツキ先輩。」
「あ…マルちゃん。」
久しぶりに見た先輩はあの日と変わらない爽やかな笑顔で振り返った。
「来年も指揮するんですね」と先輩が書いていた楽譜を覗き込みながら「隣いいですか?」と微笑みかける。
「いいよ」と先輩は自分の席の隣の席に置いていた塾の道具や楽譜を反対側に移した。
「マルちゃんはどこの短大やったっけ?」
「福岡女子です。来週から学校始まるんですよね。あ…マスター、私もブレンドで」と席に座りなおすように腰掛ける。
最初のコメントを投稿しよう!