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テーブルに、腐臭が漂い始める。
別れ話をしようと思い、話の流れを読んでいた僕の前で、彼女が頼んだ料理が次々に色をどす黒くさせ、とてもじゃないが食べられない状態に変化していった。
近くのテーブルに座る、他の客人も皆一様に白く大きい、のりがきいてぱりっとしたナプキンで鼻をおさえ、眉間へしわを寄せている。金切り声で、店員を呼ぶ彼女の息がまるで青カビみたいな、苦い悪臭を放つ。
腐ったものを出すなんて、どんな神経かしら。
シェフを呼んでちょうだい、お金も返して。
警察を呼ぶわ、悪口だって言いふらしてやる。
だいたい、高いばかりで、家でも作れそうな料理ばかりじゃない。ぼったくりもいいところだわ。
なによ、どうしてあんたたち、あたしをじっと睨むのよ。
耳が痛くなるほど、大きな声で叫ぶ彼女は頬を紅潮させ「馬鹿にされた、馬鹿にされた」と地団駄を踏んで、やってきた店員をののしった。
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