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小走りでやってきた店員に、彼女は醜く横柄に振る舞う。
あんたは見た目が悪い、だから料理が腐っただの、どうせ隠れて客の見定めでもしているんだの、つらつら並べてはまた臭い息をぶうぶうと吐き出している。
ああ、胸がむかむかしてきた。
「いい加減にしてくれよ、もう、そういうのがうんざりなんだよ」
僕はふい、と右人差し指で腐った料理が盛られた皿をなでた。
たちまち、料理はもとに戻り、素材や調味料、香辛料のかぐわしく、食欲をそそるにおいを取り戻してくれた。
すいません、やりすぎましたと僕は店員に謝った。苦笑した店員は、「大丈夫ですよ」と答えてくれた。
ぽかんとしている彼女に、僕は「さようなら」と告げた。
悪口や、嫌な噂しか話題にない、食事なんかしたくない。
あと、僕はお財布じゃないよ。君が持っている高そうな、クロコダイルの長財布はいつも空っぽじゃないか。僕に会う時は、必ずそうだった。
可愛い君は、もういない。
さようなら。
パチン、と指をはじいて空中にランチボックスを浮かばせ、テーブルの料理をしまいこんだ。
またお越しください、お代は結構です。魔法使いさん。
ごきげんよう。僕はランチボックスをを持って店を出た。ここのローストチキンは絶品だ。家にある、スパークリングワインとも合うだろう。
背中越しに金切り声と、拍手が交互に聞こえてきた。
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