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彼女のことだ、自分は悪くないと貫いて、SNSに悪い魔法使いに騙されたなんて書くかもしれない。
世の中からそんな奴自体をミュートさせる魔法は、習得しているがなるべく使いたくない。どうせ、誰も相手になんかしないだろう。
泣きついても知るもんか。
誰よりも寂しがり屋だと、知っているからこそ、辛くなってほしい。
いいんじゃねえか?ちょっとはやけどさせたって、ばちはあたらねえよ。
傍らを歩く、毛足が長い黒猫が、嬉しそうに言う。僕の相棒で、小さな哲学者は舌なめずり。ランチボックスにごちそうが入っていることは、とっくにばれている。
ひとりで食べるのもあれだ、よかったら一緒に来ないかい?塩辛くないところを、お裾分けするよ。
待っていました、と黒猫が僕の肩に乗る。日溜まりのにおいがして、思いきり吸い込む。
じゃあ、行こうか。
僕はスマホをマントのポケットに入れて、空高く舞い上がる。
月がきれいですね、とひとりごちて。
そういえば、気持ちを伝えたときにささやいた言葉も、同じものだった。
今はただ、物理的に青白い満月がきれいだという表現にしか、ならなかった。
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