出会い

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吉田は、ジャガイモを近所に配る時、丈夫な紙袋をいっぱいにして配る。初めて貰った時は、文一郎もあまりの量に何か悪いことでもしたのか、それとも彼女はこれから何かするのかと思ったが、どうにも性分らしい。分かった時には文一郎は、心底、安心していた。 散歩帰りは重い袋を下げて帰ることになるが、お互い様というやつだ。貰う側が文句は言えない。とはいえ、あの愛犬に対しての甘やかしようは、そのうち争いの火種になりそうだ。 だが、解決策も無いままではどうにもならないだろう。文一郎は、打開策も思い付かず、近所づきあいとは、そんなものだろうと、自分に言い聞かせた。 ご近所トラブルも気になるが、目先のジャガイモも文一郎は、気になってしまう。 大量のジャガイモが手にはいるとなると、息子夫婦と娘夫婦、それぞれに分けてやることになる。 おそらく、二人ともまだ小さい孫をつれてくるから、我が家で芋パーティーと洒落込むのだろう。賑やかになるだろう我が家を想像すると、文一郎も自然と口角も上がった。 娘も息子の嫁も仲良く文一郎に世話を焼いてくれる。世話を焼かれ過ぎるのもすぐに老け込みそうで、ことある毎に断っている。 それでも、週末になると食事を作りにくる娘と義娘に頭を悩ますのは、贅沢な悩みである。
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