3人が本棚に入れています
本棚に追加
プロローグ
「見付かって良かったですね」
仁奈は、文一郎に晴れやかな笑顔で言う。
二人は、楠穂神社へ急ぎ足で歩いている途中だ。二人とも持ち主の笑顔を思い浮かべて自然と口角が上がる。
「まったくだよ。見付かったのは、奇跡に近いよ」
そう言った文一郎が安堵の笑顔を浮かべる。
「大袈裟ですよ」
仁奈は、声に出して笑ったが、文一郎は、本当に奇跡だと思っている。自分一人での捜索は、無理だった。仁奈に感謝をしている。
「それより、どうして国分さんが探してたんです?普段ならこんなことしなさそうなのに……」
仁奈は、遠慮なく文一郎に自分の疑問をぶつけた。
何故、こんなことになったか。
それは、文一郎本人も知りたいところだった。
思い出すのは、神の一声。
「今日からお前は、私の狛犬だ!」
全ては、幼い容姿の神による強烈な一言から始まった。
文一郎は、そう思っている。
何故なら、神に出会う以外に、文一郎にとって特別なことなどなかったからだ。
だが、神からしてみれば、全ての始まりが自分ということは、有り得ないと言うだろう。
しかし、それを知るのも、やはり神しかいないことを神は、知っている。
最初のコメントを投稿しよう!