剣と魔法と、銃

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 そこへこの「銃」が現れた。これは遠くにいる相手に金属の弾を放って攻撃するもので、当初は弓の延長に過ぎず、並の弓より十倍以上高価な武器として認知され、多くの者はその存在意義に疑問を抱いていた。  しかしケテウスの丘での戦いにおいて、その認識は完全に覆された。  この武器の最大の長所は、神性の無い者でも扱うことができ、しかも神性を持つ相手にもある程度対抗できる(特性と練度にもよるが)ことであった。  ケテウスの丘に集結した西軍三千の内、神性持ちは三百人。従来の兵(闘士)が五百人、そして二千以上が銃士という、これまでの常識からすればあまりに常軌を逸した編成。対する東軍二千の内、神性持ちは七百人。西軍は多大な損害を出したものの、誰もが絶望視していたこの一戦を辛勝に収めた。  世界は驚愕した。そして、多くの神性を持たない者達は密かな高揚感と希望を感じた。 「持たない者でも、彼の者達に勝てるのだ」と。  世界を震撼させたケテウスの戦いから二年。銃は一大軍事産業として発展していた。  今日において、武器屋には剣と杖、盾と鎧は相変わらず所狭しと並んでいるが、そこには銃器も堂々と並べられ、その黒光りする銃身に一人の若者の姿を映し出した。
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