伝承談議の午後

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   「ええっ。じゃあ死者の書がそこにはあったわけですか?でもどうして?まさか召喚の代償でみんな消えてしまったんですか?」  「そう言った説もあるな。事実、過去の他の伝承でも似たような事例は多い」  「でも死者の書は発見されていなかったのでは?誰かが密かに持っていったんですか?」  「確かに、誰かに回収されている可能性もある。でもその後使用された痕跡が無い。死者を蘇らせる本なら厳重に保管されても使用されるのが世の常なんだが、そんな事件はなかったな。似たような話も後々偽りであると証明されている」  「ではやはり召喚に失敗していたのでは?」  それ以外に思いつかない。  「ふむ・・・。こんな言い伝えを知っているか?地面を掘ると地精霊が起こって飢饉や災害が起こると言う話なんだが」  もちろんそんな話は一切知らない。  「元になったのは500年前に実在していた地質学者の話なんだ。彼は世界は平らな一枚岩の上に成り立っていると言う論文を発表したんだ。現に彼自身も何箇所か地面を掘ってどんな物質よりも固い岩盤がずっと続いていることを確認したらしい。そこで大々的に各地で地面を掘って調査されたわけなんだが、他の地域ではそんなものはなかったらしいんだ」  「はぁ・・」  地動説とか天動説みたいなものだろうか?その話が一体なんだというのか。  「そんな折に世界的な飢饉と災害が重なって起きてしまった結果、地面を無闇に掘り返すと地精霊が怒って天罰が起こるされてしまったんだ。その学者も周囲から糾弾を受けて自殺している。実はこの学者が調べていたのが魔道大国マカヒキがあったエリアだったんだ」  固い岩盤の話と死者の書の話が・・・・。まさか・・・。  「そう。この話から推測すると、ある可能性が浮かび上がるんだ。死者の書はちゃんと召喚されていて、一応皆の目につくところにはちゃんとあったことになる」
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