伝承談議の午後

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   「簡単だよ」  不敵に笑う先輩。  「つまり死者の書とはとてつもなく大きかったんだよ。それこそ1国を一瞬で押しつぶすほどに。死者の書が1冊の本であることは知られているがそのサイズまでは誰も知らなかったわけだ。そして本の表紙も大きすぎて誰にも確認ができない」  しごく真顔で言い放つ。  「ええっーって、またやたら豪快な推理を・・・・」  しかし・・・国を一瞬で潰すほどの本が存在するとなると持ち主も想像もつかない大きさになる。  「そうでないなら本当の意味で死者をこさえるためだけの書だったんだろうさ・・・・」  それが本当ならかなり意地の悪い話になるな。  「でも地面の下には本物の死者の書が眠っているはずなんだ。しかし全ての家屋を取り壊して、土を掘り返してその全貌を晒したところで1国の大きさの本のページをめくることは未来永劫不可能だろうさ。人の領域を超えようとすることは愚かなのさ。それを皮肉るために本物が用意されていてもおかしくない」  すごいスケールの話になってしまったよ。人では到底ページがめくれない本か。
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