4月4週目

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 璃子はトイレに走っていき、環菜と飯田は壁際に並んで寄りかかって、璃子を待つことにした。 「もうすぐ10時か」  腕時計を見て、飯田がそう言った。 「結構遅くなっちゃったね」 「な」 「……」 「……」 「宇野のやつ、最初カラオケ行こうとか言ってたのにな」 と飯田が言った。 「そんなこと言ってたの?」  飯田はうん、とうなずいた。 「でも、飯食ったら眠くなったとか言い出して」 「何だ、そりゃ」  環菜もふふっと笑いながら、心の中ではカラオケって夜10時以降は、未成年入れなかったんじゃなかったっけ、などと考えていた。 「――行く?」 と飯田が言った。 「え、今から行くの?」 「うそうそ」 「嘘はよくないと思いまーす」 「ん、いや、俺も正直眠いや。結構疲れた」 「カラオケ行くんなら、最高のコンディションで行きたい」  環菜は力強く言った。 「わかる、それ」 「今行っても、すぐボロボロになりそう」  そう言いながら、環菜は喉のあたりをさすった。 「だったら家帰ってのんびりしてた方がいいよな」 「帰ったら何しようかな」 「風呂入ったら、一杯くらいやってもいいかも」 「私も飲もう! 冷蔵庫にまだ何本か冷えたのが入ってるはず」 「――やっぱりな」  環菜の全身が一気に冷えた心地がした。 「……え」  環菜はあわてて口を押えたが、もう遅い。  そろそろと飯田の顔をうかがった。飯田は少し面白がっているような顔をしていた。 「冷蔵庫に何が入ってるって?」 と飯田は言った。 「あ、あの、コーヒー牛乳が入ってて……」 「生島、今いくつなの?」 「変なこと聞くんだね。18に決まってんじゃん」 「今、18?」 「そうだよ」 「生島、誕生日まだじゃなかったっけ?」 「……! あ……そう、そういう意味ね、うん。今年で、かと思っちゃったよ、失礼……」  飯田は環菜の目をじいっと見ている。  全てが見透かされそうな気がして、環菜の鼓動の速度と強さは増すばかりだった。  突然、飯田がふっと、笑い出した。 「ごめん、意地悪なことして」 「?」
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