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「はぁ…。だから先に帰れって言ったのに…」
「心配してくれてんの?ふふっ」
きっと尻尾があったらブンブン振り回してるんだろうなぁ。困った大型犬だ。たまに狂犬になるけど。
また溜め息を吐きながら靴を履き替えていると、背後から「はいっ」と何かを差し出された。カイロだ。
「何これ」
「カイロ」
「女の子から貰ったやつ?」
「うん。いっぱい貰ったから一個あげる」
「…ふうん?さんきゅ」
一応受け取って、封を開けた。
ポケットから取り出したらしいそれは当然だがまだ使われていない新しいもので、外気に触れると段々と温かく熱を帯びてきた。
いっぱい貰った、か。ふうん。
訝しげに見つめる俺を不審に思ったのか、上から心配そうな声が降ってきた。
「カイロ、要らなかった?」
「いや?有難い。けど、」
「けど?」
「お前ちょっと手、貸して」
「うぇ、え??」
ポケットに突っ込まれていた藤倉の両手を半ば強引に引きずり出して、あちこち触って確かめる。
またもや予感は的中だ。
「お前手、めちゃくちゃ冷たいじゃんかっ!貰ったっていうカイロは?どうせ使ってないんだろ?もしかして、貰ったのこれだけなんじゃないのか?」
俺に渡してきたカイロ。それは多分ひとつしかなかったもので、こいつはそれを使わずに俺に渡してきた。ここまで来ると女の子にいっぱい貰ったってのも疑わしい。こいつなら十分有り得ることではあるんだけど。
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