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最後に見たのは2月のゆりかもめ賞の映像だった。
僕は驚いた。自分で言うのもなんだが、とても強い勝ちっぷりだった。中団の外目で手綱をじっと抑えていた僕はまるで馬群の中に消えたかのように流れに乗っている。コーナリングもとてもスムーズだった。
最後の直線で僕がステッキを抜いてポコちゃんに見せると、弾けるようなラストスパートを決めてくれた。気づいたら6馬身差をつけていた。いくら下級条件戦とはいえ、とてもその後弥生賞と皐月賞で惨敗を喫する馬だとは思えなかった。
何よりびっくりだったのは、僕とポコちゃんが人馬一体だったこと。弥生賞や皐月賞では全く無かった感覚だった。
久しぶりに、全身が震えた。
そしてふと僕は思った。
どうしてできなくなったんだろう?
いや違う。
どうやったらまたこんなレースができるんだろう?
ゆりかもめ賞と弥生賞、そして皐月賞。その差は何か?
相手が強くなった、理由は本当にそれだけなのか?
明日のダービーで同じレースが出来る可能性は本当にゼロなのか?
僕は食い入るように何度も何度もレースを見直した。気づいたらもう夜中の0時を回っていた。
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