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「あーもう……」
何であんなこと言っちゃったんだろう。
私は、急に返事が来なくなったスマホの画面を涙目で睨みつける。メッセージの相手は私の想い人。結構前から気になっていて、遠くからよく見ていた彼。なぜか最近、よく話しかけてくれるようになって、今ではこうして夜や休日にメッセージのやり取りをできるようになっている。
恋心を自覚してからというもの、直接話すときは緊張してしまって、うまく話せないことが多い。画面越しのやり取りにも、最近ようやく慣れてきた。
激しく高鳴る胸は苦しくて、だけど心地よい。そんな時間を過ごせるようになった。
ずっとこんな関係が続けばいいと思う自分と、もっと先に進みたい自分がいて、ぐるぐると同じところで回っている。それなのに……。
『ちなみにその人、小島くんの友達の友達だから』
……こんなの、私の好きな人が小島くんだと言っているようなものだろう。友達の友達。それはつまり自分のこと。ちょっと考えればすぐにわかってしまうはずだ。ただでさえ、最近は好意がバレている気がしてならないのに……。
告白する勇気なんてないのに、こんなこと言うべきじゃなかった。なかなか返事が返ってこないってことは、きっとそういうことだ。
最初は、『好きな人いるの?』なんて聞かれて、面食らっちゃったんだ。もしかしたら小島くんも私のことを、なんて考えて一人で舞い上がって……。
なけなしの勇気を振り絞って、好きな人がいるって伝えたら、『応援するよ』なんて返されて、悲しくて寂しくて悔しくて……。
「死にたい……」
抱きかかえていたクッションを腹いせに殴りつける。
「荒れてるね~」
背後から聞こえた嫌というほど聞き慣れた声にハッとして、慌てて部屋のドアの方を見ると、お姉ちゃんがニヤニヤしながら私の部屋をのぞいていた。
「っ~~!!」
私は声にならない叫び声をあげ、クッションをドアの方に投げつける。そして羞恥で真っ赤に染まっているであろう顔を隠すために布団を頭から被った。
「お風呂空いたから、入りなよ」
すぐに扉が閉まる音がして、お姉ちゃんのからかうような声が廊下から聞こえた。
……結局その日、小島くんから返事はこなかった。
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