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大きな欠伸を片手で隠しながら朝の通学路を歩く。頭を過るのは昨夜と今朝のこと。
昨晩は、小島くんからの返信を待っていたら、いつの間にか眠っていたみたいだ。握り締めていたスマホの振動で目が覚めた。それは待ち焦がれていた相手からのメッセージ。でも、そこにはただ『ごめん。寝落ちしてた』とだけ……。ため息をつきつつ時間を見ると、結構ギリギリ。ベッドから飛び起きて、急いで支度をした。
小島くん、彼女はいないらしいけど……。私の好意は迷惑なのかな? ならどうして、あんなに私に構うの? 私みたいななんの取り柄もない地味な女のことなんて、放っておけばいいのに……。もしかして、からかわれてる?
確証のない色んな想像が頭の中を暴れまわる。
はぁ、とまた深くため息をついていると、隣から肩をつつかれた。
「ねえ。ハルカ聞いてる?」
斜め下を見ると、ミキがぷくーっと頬を膨らませていた。あざといなぁと思う。でも、男の子はこのくらいの方が好きなのかな?
思わず、じっくりとミキの顔を観察してしまう。
「な、何?」
無言の私にまじまじと見つめられて、ミキはたじろいでいる。小動物みたいなこんな姿も庇護欲をそそられるのだろうか? 私だって、身長は女子の平均ぐらいだし、小島くんよりも背は小さいんだから……。
違うな。たぶんそういう問題じゃないんだろう。私は三度目のため息をついてから、なんでもないよ、と首を振った。
「あーわっかんないよー」
「あ、数学の課題でしょ? あれ難しいよねー」
そんな感じでぼんやりと会話をしつつ歩いていると、教室に着いた。時計を見ると、始業時間ギリギリだ。
「もー、ハルカが歩くの遅いから、めっちゃギリギリじゃん」
「ごめんごめん」
ぶーぶーと文句を言うミキを苦笑いで宥めながら、席に着く。この時に横目で後方の席を見るのが毎朝のルーティーン。
小島くんは机に突っ伏していて、中谷くんと何か話している。
体調悪いのかな? 昨日の私の変な態度で悩んでくれているのかな? ……そうだったら嬉しいけど、迷惑かけちゃってるみたいで複雑だ。
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