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「小島くん、今日は来ないね」
「え?」
隣の席に座るミキが、教室の後方を見ながら私に話しかけてくる。彼女が何を言いたいかはわかってる。でも、あんまり意識していると思われたくなくて、私はとぼけることにした。
首を傾げる私を見て、ミキは呆れた声を出す。
「あいつ、毎朝わざわざハルカのところにきて、馬鹿面で『おはよー』って言ってくるじゃん」
「……そういえば、そんな気もするかも」
なんてね。本当はいつも楽しみにしてる。ていうか、馬鹿面じゃないし。
でも、今日は来てくれないのかな? やっぱり何か、昨日のやり取りに何か思うところがあるのかもしれない。
怖いけれど、やっぱり気になる。勇気を振り絞って振り返ってみると、小島くんもちょうど顔を上げた。反射的に私は視線を顔ごと横に逸らす。
やばい。目が合っちゃった。ほんの一瞬の出来事なのに、私の心臓はうるさいくらいに高鳴る。おそらく真っ赤になっている顔を後ろから見えないように頬杖をついて隠していると、目の前にはニヤニヤ笑うミキの顔があった。この感じ、どこかで……
「ほーんと、二人とも面倒くさい」
私をからかう楽しそうな声音は、昨夜のお姉ちゃんの声とどこか似ていた。
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