2.朝日の中で

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2.朝日の中で

 朝の柔らかな日差しが差し込む台所に、芳ばしい香りがたちこめる。  睦月の朝は、コーヒー豆を挽くところから始まる。手動式コーヒーミルの狭い入り口に、専用のスプーンではかり豆を詰める。蓋をするとハンドルを握り、ゆっくりと回し始める。がりがりごりごりと、騒がしくミルが音を立てる。しかし決して邪険にしたりはしない。穏やかな気持ちで回し続けるのだ。  一種の儀式のようだ、と睦月はおもう。今日という日を始めるための、精神統一である。 「おはようございます」  蒸らし終え、ドリップを始めた頃、ふいに声をかけられた。  美しい青年はまだ寝ぼけ眼で、目をこすっている。  昨晩は遅かったこともあり、すぐにそれぞれ布団に入った。  清には使われていない、ある一室を用意した。 「おはよう」
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