3.秋の庭

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3.秋の庭

 先生は東屋あずまやに腰掛けて、薄い唇にたばこをくわえていらっしゃった。  何か思案するように眉を寄せ、白く長い息を天に吐き出す。  朝食を終えた午前、庭の掃き掃除をしながらその光景を目にしたとき、まるで映画のワンシーンのようだと思った。  四本の木の柱に支えられた、瓦の屋根だけの正方形の建物。6人ほどが腰掛けられそうなL字のベンチの端っこで、先生は背をもたれていらっしゃる。そこからは庭が一望できる。  先生の家は、四隅を塀で囲まれた一角にある門を抜けると、まずこの緑が広がる。  赤く染まった紅葉がこちらを出迎え、秋の澄んだ青い空との対比がまぶしかった。黄色の中心、その周りに濃い桃色の花弁が広がる、椿のような可愛らしい花が咲いている。先生が「これはサザンカの花なのだよ」と教えてくださった。ほうきの先をかすめてしまい、クマザサが僕を見上げて、先生のことをみすぎですよとたしなめた。
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