君を

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そうしていると、試合の始まりを告げる大きなホイッスルの音が体育館中に響きました。 会場は一気に盛り上がり、飛び交ういくつもの声援。 その声援の真ん中には、君の姿がありました。 久しぶりに君に会えた喜びは、あまりにも大きくて私の中の罪悪感を一瞬だけ掻き消していくようでした。 「自分の役割は、大きな声でみんなを引っ張ることじゃない。背中で引っ張っていきたいんだ。」 いつかそう言っていた君の背中は、誰よりも大きく見えました。 たくさんの苦しみと、喜びと、溢れんばかりの情熱を背負った君の背中は、十分に大きく見えました。 君の名前に負けないくらい、うつくしく光を放っていました。 君のサーブもレシーブも、チームメイトを励ます声も、駆け抜ける足音さえも、何一つ見逃さないように、聞き逃さないように、ひたすら目で君を追いかけました。 追いかけて、追いかけて。 だけどいつも近づけなかった。 人の壁がいつも君を取り囲んでいた。 私という敵が近づいたりしないように守っていた。 その中にいた見えない君にとっても、私は敵だったのだろうか。 やっと姿を見れた今、その答えを君の中に探そうと必死になりました。 誰にも気づかれないように、一筋だけ弱い涙を流しました。 ああ、そうか。 君は決して、君の中の君を教えてくれないから私は困ってたんだ。 やっぱり私はひどい人間です。 自分の幸せしか考えられない、都合のいい人間です。 だけど堕ちてしまった。 もう二度と這い上がれないほど奥深いところに、堕ちてしまった。 私をこの薄暗い場所から助け出してくれるのは君以外の誰でもないと、信じていました。
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