0人が本棚に入れています
本棚に追加
観覧席の1番後ろで、君を追いかけて、微笑みもせず、ただ君の姿を目に焼き付けました。
君は悔しがったり、喜んだり、笑ったり。
君の全てを、「これで最後だよ。」と、私に見せてくれているように見えました。
もう二度と会いにきてはいけない、他の人のものである君を忘れたくない、その一心でした。
だけどその心のどこかで、もしかしたら君は私が来ていることを知っているんじゃないかというほんの少しの期待さえ抱いてしまっていました。
その期待は、振り払うことのほかにどうすることもできませんでした。
試合が終わり、すぐに立ち去ろうとして出口の方を向いたそのとき、私は目を疑いました。
彼がいたからです。
私の居場所を誰かに聞いて追いかけてきたのでしょうか。
でなければただの偶然?
それとも純粋に、彼の親友である君の姿を、私と同じように見に来たのでしょうか。
私は彼が怖くて恐ろしくて、目を瞑って彼を通り越しました。
そして走って、走って、走って建物の出口を目指しました。
人混みを掻き分け、人混みに紛れながら必死に外に出ました。
長い距離でもないのに、息が切れて視界が霞み、倒れてしまいそうでした。
冬の風が鋭く頬を擦りました。
怖いのはいつも自分だった。
だけど彼の中にそれを隠して、まるで彼を恐れるように逃げてきた。
力なく後ろを振り返り、君にどうしても伝えたかったことを思い出しました。
最初のコメントを投稿しよう!