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つい声を張り上げてしまう霞に、鈴重夜道は冷やかな目を向けたまま薄く笑う。
「お前らはこのガキを回収するために寝る間も惜しんで探してたんだよな。だったら回収すればいいだろ、俺の事情は二の次でいいはずだ」
「っ…」
「そういうわけにはいかないんです」
言葉を詰まらせた霞の代わりに辰巳が一歩前に出て言った。
「確かに僕たちはその子を探していました、あなたならもう把握しているでしょう?その子の中に何があるのか。だったら僕らは争う必要はありません、その子は協会でなんとかします」
「具体的には?」
「………それは…」
「お前ら末端がどうにか出来る術を持ってるわけないわな。その様子じゃ回収してどうするのかも知らないんだろう…いや、知らされていないのかもな」
「はっきり聞いてええか?」
霞が力を籠めて言う。夜道は霞に目を向け言葉を待った。
「あんたは、その子をうちらに渡す気はあるんか?」
「はっきり答えていいか?」
同じように夜道が返してくる。
霞への返事を、包み隠さず。
「渡す気は、ない」
夜道の指がバキリと鳴り、四人の背筋に冷たい物が走った。
「メイアの魔術を解除するために動いてて、その術を持ってるってんなら躊躇わず引き渡すところだ。だがお前らには期待出来そうにない、お前ら協会の魔術師全員を信じることが出来ないから、俺はメイアを渡さない」
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