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「隼テメェッ!!横取りすんじゃねえよ!!」
「まあまあ、今はそれどころじゃないし勘弁してくれ……よッ!!」
弾け飛ぶ夜道を追った隼はあっという間に抜き去り、体を縦に回転させて真上に蹴り上げた。だがそれも夜道はしっかり手足を折り畳んで防いでみせた。あの状況下でも適切に対応するのには隼も舌を巻いたが、特に拘ることでもなかった。
「辰巳!!」
「待ってましたよ」
地上で術式を用意していた辰巳。夜空に舞い上がる夜道を真っ直ぐ見上げながら足元に青白い光が回り、広がって、
「【嵐振り撒く紺碧の竜(ドラゴン・ザ・テンペスト)】!!!」
両手を振り上げる。それを合図に辰巳を取り巻くように広がっていた光が噴き出し、青い竜となって上昇。大口を開けてかっ飛んでいく竜は夜道を逃がさず、飲み込み、結界を引き裂いて雲を貫いた。
「……ちょっとやり過ぎじゃね?」
「相手は"あの"鈴重夜道なんです、出し惜しみして倒せるような人じゃないでしょ。加減はしましたが、それでもこれで確実に意識は断てたはず…」
竜が消え、やがて内側にいた夜道が煙りを引いて落ちてくる。体に力が入っていない様子を見るに、目論見通りうまく気絶させられたようだ。
「隼さん、受け止めてください!」
「お任せっ!」
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