286人が本棚に入れています
本棚に追加
夜道の落下コースを計算し、真横からぶつかるようにキャッチするべく飛んでいく隼。しっかりと背後から、警戒を怠らない。
胴体に右手を巻き付ける。夜道の手足はダラリと垂れ下がり、やはり気絶しているようなので辰巳は安堵の、拳は落胆の吐息を零した。
だが霞だけはまだ気を緩めない。確実に意識が無いことを確認するまでは緩めてはいけないと自分に言い聞かせていたからだ。
所属部隊の隊長は言っていた。
『夜道を甘く見てると酷いしっぺ返しが来るぞ』―――と。
だからだろう。
「―――…ッ!隼ッ!!」
「え?」
唯一夜道を注視していた霞だけが気づけた。
隼の腕に抱えられている夜道の目が、はっきりと開いた瞬間に―――。
ズドォッッ!!!!と、鈍く大きな音が頭上高くで響いた。
「……あ?」
拳が唖然とする。
「……な………なんで…?」
辰巳が愕然とする。
急にバランスを崩した隼が夜道と一緒に落ちてきて、地面に激突する寸前で体を振り回し、派手な音を立てて着地。
着地したのは隼―――ではない。
「空を飛ぶ魔術師か……ただの噂だろうと思ってたが、まさか実在してたとはな」
白目を剥いた隼を肩に担ぐ―――鈴重夜道という男だ。
「……辰巳の魔術はうちらの中で最大の威力がある…せやのに平然としてるんか…」
最初のコメントを投稿しよう!