Storyー1 神童と呼ばれた一人の聖者

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デスクの引き出しから煙草を取り出し、口にくわえた会長はそのまま背もたれに体を預ける。 「これでも譲歩させた方だぞ。お偉いさんの中には陽京を殺せという奴までいた」 「そ、そんなッ…!」 「陽京はただの魔術師じゃない、敵に回せばある意味『理の探究団』並みに厄介になりかねないアンチ魔術を体現した存在だからな。陽京をいい目で見てなかった連中が少なからずいたのも事実……こればかりは俺でもどうにもならなかった」 「俺の後釜は決まってるんすか?」 ショックを受けるグループメンバーと違い、陽京はあっけらかんとしたまま口を開く。その表情には全く焦りの色がなかった。 「いいや、俺が考えると言って納得させた」 「なら、後釜が決まるまでリーダーは空白になると」 「そうすると『ブレイカーズ』が機能しなくなる。明確な司令塔がいなけりゃチームとして成立しないからな。"後釜が決まるまでは陽京がリーダーのままだ"」 含みのある笑みを浮かべた会長に陽京も笑う。何故二人が笑っているのかわからない四人に陽京はやる気のない調子で説明した。 「俺は失態を犯したのでリーダーから外されるのが決まった。だけど次のリーダーが決まるまでは俺のまま。なら、後釜が決まるまで俺はリーダーとして自由に動ける」 「………つまり、どういうことなんだ?」
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