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魔術師の陽京より強い華色。そんな彼女だが、実は魔術師ではない。
義理の姉、そして義理の母。父親との再婚相手である。陽京の実の母はどこで何をしているのかわからないし、陽京自身母の記憶がない。それほど幼い頃に別れてしまっていた。
陽京が五歳の時に再婚し、血は繋がっていないが今の母と姉は紛れもない家族。わだかまりも一切ない、本当の家族のように接している。
今は三人だけ。何故なら陽京の父親は数年前、とある事故で死亡しているから。
"とある事故"……魔術師である父親が車に轢かれたとか高所から転落したとか、そういう事故ではない。
魔術が絡んだ事故で死んだ。殉職したのだ。
どんな任務で死んだのかは陽京もわからない。同じ魔術協会で働いていたというのにその情報が一切無かった。わからなかった。
だから陽京は『聖者』を継承し名乗っている。元々魔術師としての目標が技能伝承のみとされる稀少なタイプの魔術師の家系である陽京にとって何かを成し遂げるなんて目標はない。
ただ繋ぐだけ。
そしてもう一つは、秩序を乱す魔術師の討伐。
これは『過ち砕く断罪の聖者』の責務といっていいだろう。父親しかり、陽京もまたその責務を全うするべく協会で働いている。
「あ~イテ、ったく加減しろよなぁ」
「動いたらお腹空いちゃった。陽京、あんた何か買ってきてよ」
「くたばれ俺はパシリじゃねえんだぞ」
「パシリ一号が生意気な」
「だからパシリじゃねえっつの!」
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