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「この少女が脱走したんですね。ここまで特徴的な出で立ちならば見つけるのも容易いでしょう」
「しっかしわかんねえな。いくら魔術の扱いがまともに出来ねえからってこんなガキに俺たち四部隊全員を呼び出す必要があったのか?見つけて捕まえるだけならこの半分か一部隊だけでも済む話だろ」
「聞いていなかったのかマーカス、事態は緊迫していると。これは非常事態なんだ」
「そんなにヤバい魔術を使えるってんですかい?」
会長が煙草の灰を灰皿へ落としてからまた口元へ運ぶ。
「この子はまだ魔力をうまくコントロール出来ない。だが、とある魔術を一つだけ、偶然にも発現させてしまったんだ」
「どんな魔術なんだぁ?」
緊張感のないマーカスが適当な調子で尋ねる。
第一部隊隊長、そんな彼でさえ凍り付く魔術の名が会長の口から飛び出した。
「―――【灰塵残さぬ死滅の息吹】」
マーカスだけではない、会長室にいる選りすぐりの魔術師全員の呼吸が止まってしまった。
「またの名を【デッドブレス】と呼ぶあらゆる魔術の中で最悪と評され、魔術の核弾頭とも言われる力。一度発動すれば大国を文字通り地図から消せる威力を持った破滅の権化」
「………バカな」
陽京は愕然としたまま呟いた。さっきまで呑気だったマーカスでさえその表情が固まってしまっている。
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