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魔術は魔術師の生命力を元に作り出された魔力によって構成されている。どんな強大な魔術であろうが使用者が死ねば術は崩壊し消滅する。
それは魔術の極地であっても変わらない発動における絶対条件。つまりマーカスの一見酷い提案も実際は最善策なのだ。
「ダメだ、絶対に殺すな」
しかし会長はその最善策を蹴る。
「まだ発現しただけだ、彼女をしっかりと管理し解除の糸口を見つければ死なせる必要はない。あくまで確保だけだ、絶対に危害を加えるな」
「その管理がずさんだったから逃げられてんだろ。まあ、上がそういう判断なら命令通りやるけどなぁ」
会長の言葉にマーカスはひとまず納得し、他の魔術師たちも特に何も言わず会長の指示に従うことを決める。
(………管理、か)
陽京だけはその言葉に引っ掛かっていた。
一度発現した魔術を使わないように管理するなんてどうやったら出来るんだろうか、今の協会にそれが出来る技術があるとはとても思えない。まだ魔術の扱いに慣れていない幼い子供をどう管理すれば発動させないように出来ると言うのか。陽京はそこに疑問を抱かずにはいられなかった。
だがまず第一に優先すべきは少女の確保。そこだけは間違いない。即刻見つけ出して保護しなければ【灰塵残さぬ死滅の息吹】が爆発してしまう可能性がある。それも、何も知らない一般人たちの中心で。
「期限は三日間。それ以上はいつ発動してもおかしくない。全員死ぬ気で探してくれ」
『了解』
魔術師たちが動き出す。破滅を宿した少女の確保に乗り出す。
日本の運命を託されたと言っても過言ではないミッション、スタート。
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