0人が本棚に入れています
本棚に追加
そうだ。図書室ではしずかにしないと。それに、クラスの子に今のじょうきょうを見られるのはマズい気がする。
「この本、かりて読むことにしたから」
言って、ぼくはせきを立った。
カウンターまで歩いたところで、ぼくが本を読んでいた長づくえの方を見た。
女の子は――いなくなっていた。
自分の部屋。学習づくえについていたぼくは、いすをずらしてせのびする。
しゅくだいはどうにかすませた。図書室でかりた本を読もうかな、と思ったけれど。外に出てみようかな、とも思う。
カキの木が気になるのだ。
うちにはカキの木が六本ある。にわに一本、うらにわに一本、畑に四本。そのうち、今年まともにみをつけているのは、にわの一本と畑に四本あるうちの一本だけ。きちょうなカキだった。せっかくだから、じゅうぶんにうれさせてからちぎってやろうと、カキ番をかって出ていた。
「あっちのえだとか、どうだったかな。う~ん。今日か明日か……」
――よし、と立ち上がる。
やっぱり、外に出ることにした。
にわのカキの木をかくにんして、畑のカキの木の方にむかう。先をわった青竹と、あらいおけを持って。畑のカキの方は、もう食べごろになっていたのだ。
だんだん畑のカキの木があるところまで行くと、はなれた小さな畑に父さんがいるのが見えた。そして、父さんのそばにはもう一人いた。緑のふくを着た女の子で、遠目ながら見おぼえがあった。
「あの子って、図書室にいた子だよね」
まちがいないと思う。今日、長づくえでむかいにすわっていた女の子だ。
なんでここにいるんだ? 家がこの近くだとか? いやいや。このあたりの子なら、どこのだれだかぼくが知っているはずだよ。あの女の子は、このあたりの子じゃない。
ぼくをつけてきたとか? ――それは、ちょっと。こわいんだけど。
ざわざわする。
ぼくは、その場でみをよじった。
父さんと女の子がいるところには、うちで食べるぶんのナスがうえてある。ためしにうえてみたものだとか、よそではあまりつくらなくなったものだとかが多い。このごろはもうナスの太りは止まっているけれど、あじのしっかりしたいいナスがのこっている。
最初のコメントを投稿しよう!