1人が本棚に入れています
本棚に追加
牛めしで腹を満たしたあと狸小路まで歩いた。
ススキノと狸小路は思ったほど離れていないからフラフラと歩いた。
何か帰るのがもったいない感じがして、アーケードを当てもなく往復したりしてみる。
そういえばいつか深夜の狸小路で観客もいないのにギター弾いてる若者がいたなと思う。いるのは酔いつぶれた酔っぱらいとホームレスぐらいだったか。
悲しいげなフレーズがアーケードに反射して、よりはかなく悲しく聞こえた。なんだか酔いのなかで頑張れ若者。負けるなよ。と心の中でエールを送ったそんな日だ。
結局なけなしの残金でネットカフェで仮眠を取ることにした。
フラットシートに転がってうつらうつらしていると。小学6年までさかのぼる嫌な思い出を夢にみた。
担任の女教師はいつも僕をさらし者にした。答えを求められ、答えても女教師の気分で怒鳴られ、罵られ、殴られることもあった。
あの頃僕はトラウマのかたまりで。自尊心は深く傷ついていた。
ある時学校へ行くのを辞めた。不登校を決め込む覚悟だったが、登校をさせようとやって来た女教師になんとなく、ほんとなんとなく言いくるめられて再度登校をはじめた。
だからといって女教師の態度が変わったわけではない。
小学生であらかたの破壊された精神は30年経っても癒えてはいない。
女教師のあの視線、あの言葉が僕にひどく虚しい季節を植え付けた。
ぼんやり目が覚めたとき。体がひどく硬直していた。ほぐすのに時間が必要だった。
いやなものを見てしまったなぁと高まった心拍数のまま、ドリンクサーバから立て続けに炭酸飲料を流し込んで、口と喉の乾き、呼吸を整えた。
そして不安定なままネットカフェを出て、大通公園へ歩いた。なぜだか無性に広い空が見たくなった。近場なら大通公園かなと思ったのだ。
すでに昼近い時間になっている。人の流れが速い。
酔いは抜けているはずなのに足元がフラフラとする。心の傷を、生傷のままの心を不意に触れてしまい動揺してしまったか。
大通公園のテレビ塔が見える芝生にたどり着いたときには、全身から冷汗が吹き出し息が荒い。鼓動がはげしく打ち鳴らされている。芝生に大の字になって空をみた。夏の終わりの青い空、雲が少しかかった空だ。
雑踏の音が細かく聴こえる。
仕事。電話。世間話。子供の声。
僕はなにをしているのかと思う。虚無感、孤独感に襲われる。
最初のコメントを投稿しよう!