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同じ学科の派手めの姉さまたちに馬鹿にされるのはまだがまんできた。それがよりによって学食で飯を食べてる僕の後ろで、長瀬陽子が堂々と自分の密談をしているとは。
「やっぱり嫌でしょ?尾形君となんて」
「嫌っちゃ嫌かな~」
「あははは」
傷ついた。
なにか怒り出す気力も、同時にタイミングも失ってしまった。
僕は彼女たちを尻目にすごすごと退散した。ただひとり長瀬陽子は僕の存在に気がついたようだった。
午後からの授業はほとんど筒抜けだった。前の席に座っている長瀬陽子を見る度に怒りと悲嘆の気持ちが代わる代わるやってきて、記憶することはおろか教授の話を理解することもできなかった。
3日大学を休んだ。
あの僕に対する堂々たる密談を心の中で整理しようとしたが、それができないことがわかって1日。次にあれは一種の「事故」だったのだと思い至るのにさらに一日。最後は行けるところまで自転車旅行をしようとして3つほど町を通り越してはみたが、ゼミの試験が何日か後にあるのを思い出して帰ってきて一日。
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