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女は赤子の泣き声で目を覚ました。
一瞬で現実を把握する。赤子を抱き抱えながら慎重に木から降りると
森の外へ出た。
見る間に男たちが矢を携えて追いかけてくる。
女は再び走った。
なぜか走れば走るほど子供は大きく成長していった。まず女の胸を離れ、自ら走るようになる。ついで目の前にあった刀を取り、矢を防いだ。男たちに追いつかれそうになると子供はたくましい青年に成長し一刀両断に男たちをなぎ倒した。逃げながら子供は女に逃げ道を指図した。
指さす方向に洞窟がある。女は追いつめられるのではないかと恐怖したが子供は肩を抱いて女を洞窟の奥へ女を導いた。
そこは女の元いた世界につながっていた。山のふもとの丘の洞窟を抜けると村の姿が一望でき、小さな明かりが点在していた。
女は子供を見つめた。彼は美丈夫の青年の姿をしていた。
しばし見つめ合う二人だった。
すると青年は洞窟の中に入り、争いが蔓延する世界に帰ろうとしていた。
女は必死に止めに入る。それに青年は腹を立て村を指さし、女の世界に帰るように促した。女は泣いて拒んだ。女は争いの世界にも現実の世界にも帰りたくなかった。女は泣いていた。それしか術が残されていないように。
青年は真正面に女を見据えると、気合いとともに刀を振り下ろした。
見ると女は翼を切断され息も絶え絶えになっている。
「戦え」
言い残すと女を尻目に青年は洞窟の中に姿を消した。
女は一人取り残されながら、おぼつかない足取りで村へ歩を進めた。
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