4.待つ相手

2/2
前へ
/10ページ
次へ
 去年の今日。私は一人泣いていた。二年付き合っていた彼の家へサプライズで行ったら、逆サプライズを受けてしまい、別れた。 カップル通りと呼ばれるこの道路を歩くのは、さすがにしんどく、隠れるように近くの店に入った。  「いらっしゃ~い。あらやだ!なに泣いてるのよっ?!!ちょっと、ティッシュ~~!」 そこは、おかまバーだった。いつもの私なら、引き返していたが、もうダメだった。優しい店員さんに差し出されたティッシュを鷲掴み、思い切り涙やら鼻水やらを拭いた。  「も――――!!あんなやつ、こっちから願い下げだっつーのっ!!バーーカ!!」 「わかるわよ、その気持ち!男ってホント、勝手なんだから!」数十分後、自分でも驚くほどに、打ち解けていた――。  今年の今日。待ってくれている人がいる。私は、バーの扉を開け、店員さんに飛びついた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加