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 ――ガタンガタン。  きちんと舗装のされていない田舎道はでこぼことしていて、車体はさっきから振り回されてばかりいる。昨日降った雪はまだ残っていて、畑ばかりのあたりは一面真っ白だ。一夜明け、すっかり凍った(わだち)がさらに道を悪くしていた。  ――ガタンガタン。  小さく揺れる車の中で、花也(はるや)は座席のシートに身を任せ、ぼんやりと移りゆく景色を眺めていた。 「今度もいいお友達ができるといいわね」  助手席から母親が声を掛けたが、花也はむっつりと黙り込んだまま、きゅっと唇を結ぶ。  花也の手には先週のお別れ会でもらった、友人達からの手紙が握られている。  あんないい友達が、他にできるわけがない。それでなくとも、引っ込み思案な性格が更にそれを邪魔する。 (麻衣子みたいな友達が、そうそうできるもんか!)  親友の姿を思い浮かべ、花也は内心毒づいた。  麻衣子は前の学校でできた親友だ。  勝気な目、つっけんどんで刺々しい物言いは勘違いされやすいが、本当は優しくてしっかり者で頼りになる麻衣子。麻衣子が大好きだった。 「大丈夫だよ母さん。花也には俺がいるし」  双子の兄・光也(みつや)が身を乗り出し、助手席の母に向かって得意げに言う。 「なぁ、(はる)?」  花也はちらりと光也を一瞥し、それからこくんと頷いた。  そうだ、光也がいる。  少なくとも光也がいてくれれば、なんとかやっていけるだろう。 「新しいガッコ、どんなどこだろうな」 「……どんなとこだっていいよ。どうせ友達なんてできないし」 「まったくお前は。またそんなこと言って。花也がそんなんじゃなあ、できるもんもできないぞ」  花也は光也を無視してプイとそっぽを向いた。そして花也も身を乗り出すと、運転席を覗き込んで父にたずねる。 「じいちゃん達、元気かなぁ。ねえ、もうすぐ着く?」 「あと三十分くらいだよ。二人ともちゃんと座ってなさい、危ないから。シートベルトもちゃんと締めて」
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