3.本が消える音

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    ※  鳳書店の店主は、結局飲まれることはなかった客用のお茶を、すっかり冷たくなっていたけれど、喉を鳴らして飲み干した。  いつからだろう。  いや、知っていた。  ただ、黙っていただけだ。  小さな震動があり、蔵の戸が閉められたのだと分かった。  店主は裏手を見やり、口の中で、声を(かす)らせた。 「朋久君……」  だがそれに答える人間(・・)は、もうそこにいなかった。(了)
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