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『彼の女を想う』
「ありがとうございましたー」
イートインのサラリーマンが席を外す。店から出たのを確認しそこまで汚れてはいない、ガラスに向かうテーブルを拭きあげる。
改札を出て直ぐにあるガラスに区切られたカフェ。有名チェーン店のこの店は結構広く、快適なイートインスペースも売りのひとつ。
そんなテーブルのひとつをきれいにしながら時間を確認。18:23。
あの人が出てくるまでもう少し時間がある。
大体19:16着、前後1本位が出没のタイミング。
今日はあの人をみれるだろうか?
ひどく勝手な片思い。
サラサラ滑らかな黒髪にちょっとキツめな目元に化粧。可愛いより綺麗が似合うタイトスカートのスーツのあの人。
凛とした雰囲気が本来であればあの人を包んでいるのだろう。
本来であれば。
もうすぐ、もうすぐ。
次々溢れる人の群れ、きっとこのどこかにあの人はいるはず。
帰りを急ぐ速足の集団が過ぎ去れば、そこからまばらになる人混みの中にあの人はゆったり現れる。
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