一方通行

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カツり、カツりとゆったりとキャリアウーマン風のあの人は改札にむかう、あくまで風なのはその両手でしっかり持ってる本が原因。 今日も残念極まりない。普通に歩いていればキレイなキャリアウーマンなのに。 キリがあまり良くないのであろうチラチラと改札までの距離と本を閉じるタイミングを測り表情に焦りが浮かぶ。さらにゆっくりになる歩みが唐突に止まり。 あ、諦めた。 くるんと向きをかえた彼女は備え付けのベンチへ本を読みながら向かっていく。 なんだろ?多分ミステリっぽいやつだけど。 作業の合間にあの人を見る。だいぶページに偏りがあったからあのまま読み切るつもりなのかもしれない。 このカフェでバイトを始めて割とすぐに見つけたあの人。きっと電車の中で読んでてそのまま改札まで向かっているのだろう。両手に本が標準装備。 あの人の本を読み終えた時が一番だけど、本と関わってる時間の表情全てに惹かれてる。 本を閉じる瞬間。名残惜しげに、楽しそうに、満足そうに、時には泣きそうに、くるくるくるくるとその時により変わるあの人の感情が楽しみで仕方がない。 あれこれ思う間に読み終えたらしいあの人は改札をぬける。 ……………どうやら納得のいく結末でなかったよう。もやもやと難しい顔で視界から消えたあの人。 ワクワクと期待に満ちていた昨日の顔とは正反対だ。 さぁ明日はどんな顔をみせてくれるのだろう? バイトの時間の少しの楽しみ。 明日の表情を想像し、ほんのりと口角が上がった。 互いが互いを見てると知らない、彼らは明日に想いを馳せる。 彼は。 あの人は。 次に何を読むのだろう? 2人の邂逅はいつかのその先。 待ち時間のその先に。
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