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もう一切れ舌に置く。筋肉が一気にゆるんでほころぶかつての感覚を待った。
ゆっくりと咀嚼する。えずいたり吐いたりはしないものの、さっきと同様の後味に舌は後退り、留めるのを拒むように喉元が開いた。
かつては飲みこむのが名残惜しい程だったそれが、温度以外の喜びはもたらしてくれないまま器官を通り過ぎていく。
ハンバーグを一切れの次はパンを一口、またハンバーグとバカみたいに繰り返す。
ベルが鳴り、新たに入って来た三人家族が横を歩いていった。外は寒かったらしく、上着越しに肩を擦る両親をニット帽の男の子が急かしている。
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