チーズハンバーグBセット

それぞれ別のケーキを食べている四人家族、サンドイッチの盛り合わせをシェアして写真を撮り合っている学生グループ、ドリンクだけを前に何かを語らい、時折笑い声を立てている老夫婦。
一人で来ている客もいたが、そうでない家族連れやカップルがやたらと目についた。

視線を正面に戻す。モスグリーンの見慣れた鞄が席についている。ログハウス調の店内に、妙に馴染んで居心地良さそうにしているそれ。大して荷物が入っていなくても、「重いだろ」と度々持ってくれた彼。

　もし彼と一緒だったら、こんな風に一つの物を眺めたりなんて出来ないだろう。
講義の話、流行りの映画の話、お互いの今日の髪型、店内に流れる知らない曲の事などをいちいち挙げて、いちいち笑う彼に私も笑っただろう。

天気も、その日起こった事も、これから起こるかもしれない事も、たまたま目についた物や人の様子も、何でも笑いに変えてくれる人だった。
観葉植物や急に降り出した雨、窓の外の水滴ですら彼が指差すと途端に面白いものになったのだ。