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そこかしこでいい匂いが立ち上り、笑い声が生まれている。私はその中で下を向き、パンを皿に戻した。
フォークとナイフを持ち、ハンバーグをまた口に入れる。肉の強い旨味と、ボリュームと引き替えに胃がもたれないよう淡泊な品種だというチーズの爽やかな余韻が鼻から抜けるはずだった。
駄目だった。肉の旨味はただの臭みとして、チーズの余韻は鼻から抜けるというより鼻につくような後味となって口中に広がる。嚥下の間際にすえた匂いがした。
私は今までこんな不味いものを食べていたのか。
驚くと共にどこか懐かしさも覚えながらフォークを握る手に力を込める。そうだ、そういえば私は豚肉もチーズも苦手なんだった。
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